64:子どもの性格は、親のせい??

親子

「どうしてこの子はこんな性格になったんだろう?」
「よその子はさっさとできるのに、どうしてこの子はこんなに遅いの?」
「せっかちなこの子の性格は私のせい?」
・・・など、子どもの性格について疑問を抱く方は多いと思います。
そこで、人の性格は「遺伝か?環境か?」という論議がありました。
その昔「子どもは真っ白な状態で生まれてきて、親の養育態度によってその子の性格も大きく左右される」というような養育態度が全てを握ると考えられていたこともありました。
しかし、最近では双生児研究が進むにつれ、遺伝の影響も注目されるようになりました。
アメリカの精神科医:クロニンジャーの研究で遺伝的な基礎は下記の4つに分類されることがわかりました。


新奇性追求:目新しいものを積極的に探求したり、衝動的に決断したり、短気だったりする積極的・攻撃的な性質。
損害回避:将来に対して悲観的でクヨクヨしたり、不確かなことを恐れたり、人見知りするなど、傷つくのを避けようとする消極的、防衛的性質。
報酬依存:人に対する愛着が強く、人から支持して欲しいという気持ちを強く持つ受動的な性質。
固執
下記は、子どもの行動特徴について、遺伝による影響が高いとされているものです。
歯ぎしり・夜尿・夢遊・爪かみ・指吸い・乗り物酔い・便秘・不注意・多動・注意欠陥多動性症候群・せっかち・のんびり
母親と子どもの性質の違いを比較することで分かりやすくしてみます。
(※これはあくまでも伝わりやすくするための例です。このような性格の母親だと子どもはこう育つ・・・と限定したものではありません。)
【例1】
母親がせっかちサンで子どもがのんびりサンだった場合、母親はイライラして急かして声を荒げてしまうこともあるでしょう。
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その結果、少しビクビクする傾向の子どもに育つかもしれません。
【例2】
子どもがせっかちサンで失敗が多く、母親がのんびりサンで確実に物事をこなす人なら「もうちょっと落ち着きなさい!」とたびたび怒ってしまうかもしれません。
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落ち着きのない私はダメな子なんだ・・・と自信のない子に育つかもしれません。
【例3】
母親が人見知りで、かつおとなしいタイプで子どもも同じタイプなら、さほど違和感を感じないかもしれません。でもその逆だった場合「もうちょっと愛想よくしなさい。」とか「もうちょっと友だちをつくりなさい。」とか忠告してしまうかもしれません。
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それにより、私は人付き合いが苦手だ・・・という思い込みで、人との関わりの中で劣等感を持つ子に育つかもしれません。
【例4】
長女は、おとなしくて親の言うことを聞くイイ子ちゃんタイプ、次女は我が道を行くタイプで何度言っても言うことを聞かないタイプ。そうすると、親は長女には優しく、次女には荒っぽくなってしまうかもしれません。
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長女には手をかけなかったせいで、「私は大事にされなかった」と感じてしまうかもしれません。
上記のように、遺伝が突出して性格に影響するわけでなく、環境だけが際立って性格に影響するものではないことがわかります。親の養育態度と子どもの遺伝的性格が相互に影響しあうことで性格が形づくられます。
生まれ持った性質により、子どもへの接し方が変わるということです。親も子どもから大きく影響を受けながら子育てをしているのです。
そこで、養育過程で子どもに大きく影響するのは子どもに対する「発達期待」です。「こんなふうに育って欲しい。」という期待が強く子どもにのしかかった場合、子どもの特性が無視されかねないということです。
ちょっとブレイクして・・・日本とアメリカの母親の発達期待の比較を見てみましょう。
■日本の母は 、従順さ・感情の統制の発達の期待度が大きい
従順さ:呼ばれたらすぐ返事する。またはすぐに来る。
親からいけないと言われたらなぜなのか分からなくても言うことを聞く。
感情の統制:欲求不満になったときでも泣かずに我慢できる。
いつまでも怒っていないで、自分で機嫌を直す。
■アメリカの母は、社会的スキル・言語による自己主張の発達の期待度が大きい
社会的スキル:友達を説得して自分の考え、したいことを通すことができる。
友達を遊ぶとき リーダーシップをとれる。
言語による自己主張:納得がいかない場合は説明を求める。
自分の考えを他の人にきちんと主張できる。
1982年の調べなので、現在とは少し変わっているとは思いますが、傾向としては頷けると思います。
他「学校関係スキル・礼儀・自立」に関しては 大差は認められなかったようです。
【例】
①音感が優れた子どもが、音楽一家に生まれ→音楽家になる・・・Aタイプ
②     〃       、 農家に生まれ→農家を継ぐ・・・・・・・・Bタイプ
③     〃       、 農家に生まれ→音楽家になる・・・・・・Cタイプ
A・Bタイプは、珍しくありません。
分かれ道があるのは、③のケースです。
普通の家庭でこのようににはっきりした選択の道はなくても 親の期待というのは少なからずあるはずです。「いや、私は 子どもは自由にさせてる。たいした期待はしていない。」とおっしゃる方の中にも 無意識の内に強要していることがないとも言えません。
親子であっても抱く展望が違うこともよくあります。
親子であっても感覚は違うものであり、それを認め、どれだけ子どもの感覚・性質に目をむけ、伸ばしてやれるかが親の大きな務めです。そんなにうまくいかなくても、心に留めておくことで何か違ってくるのではないでしょうか?
参考文献:人格心理学(著=榎本博明・桑原知子)

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